私たちの働く状況や環境はさまざまです。
がんなど大きな病気が見つかったとき、職種や状況によっては、退職や転職という選択肢をとる方もいるのではないでしょうか。
また、一人暮らしの方など、場合によっては家族のサポートを受けるため引越しを行うこともあるかもしれません。
そんな時、場合によっては高額療養費を二重に支払わなければならないケースがあることを知っていましたか?
この記事では、高額療養費を受給しながら退職や転職、引越しを行う予定がある方のために注意点を解説していきます。
正しい知識をつけることで予定外の出費を避け、大切なお金を少しでもご自身や大切な方のために使ってください。
高額療養費は、保険証切り替えに注意
高額療養費で支給されるお金は、加入している保険組合からひと月ごとに支払われます。
注意するべきなのは、これまでの保険組合を脱退し、別の保険組合に加入したとき(=保険証が切り替えになったとき)です。
月の途中で退職や引越しを行い保険組合が変わった場合、それぞれの期間で限度額までの支払いを行わなければなりません。
例.中小企業が加入している「協会けんぽ」の会社員が3/15に退職する場合
3/1~3/15 → 社会保険(協会けんぽ)の限度額までを負担
3/16~3/31 → 国民健康保険の限度額までを負担
このように、3月15日までと16日以降でそれぞれ限度額までの支払いの必要が生じてしまいます。
定期的に高額な医療費の支払いが続いている場合、最大でもとの自己負担額の2倍の医療費を支払うケースもありますので要注意です。
さらに、多数回該当や世帯合算の回数もリセットされます。
過去12ヵ月間に3回以上自己負担限度額に達した場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられる制度。
ひとつの世帯(同一の健康保険組合)で、月内に21,000円以上の自己負担額を2回以上支払った場合、それらを合算して限度額を超えた金額の支給を受けられる制度。
退職・転職する場合
仕事を退職する場合、多くの場合は社会保険から脱退し、国民健康保険に加入することになります。
前章の例で解説したように、高額療養費は退職前の期間と退職後の期間でそれぞれに計算され、その両方を限度額まで支払う必要があります。
また、世帯合算や多数回該当の回数もリセットとなります。
転職で保険組合を脱退し別の保険組合に加入する場合も、リセットとなってしまうので注意しましょう。
引っ越しする場合
引越しを行う際に注意するべきなのは、フリーランス、アルバイト・パートなど国民健康保険加入者の場合です。
治療の期間、勤務先の社会保険に加入し続けている場合はこの限りではありません。
都道府県外への引越し
国民健康保険は都道府県単位で運営されているため、都道府県外への引越しを行う場合、加入先が変わることになります。
例えば東京都から埼玉県へ引越した場合、同じ国民健康保険であっても「東京都国民健康保険」を脱退し「埼玉県国民健康保険」に加入するという手続きが必要です。
そのため、病院での治療を受けた場合、引っ越し前までの期間は引っ越し前の自治体に、引っ越し後からの期間は引越し後の自治体に限度額までの支払いが必要です。
多数該当・世帯合算の回数もリセットとなってしまうので注意しましょう。
都道府県内への引越し(市区町村内)
同じ都道府県内かつ同じ市区町村内での引越しの場合は、国民健康保険脱退の必要がないため、高額療養費制度に関する影響はありません。
ただし国民健康保険の住所変更手続きは必要になるので、忘れないよう注意しましょう。
都道府県内への引越し(市区町村外)
同じ都道府県内への引越しで、市区町村内が変わる引越しの場合は少し複雑です。
引越しの際、同県内では国民健康保険の資格を喪失することはありません。
ただし保険証番号が変更となり保険証を変更する手続きが必要となります。
病院窓口では、引っ越し前と引越し後にそれぞれ限度額までの支払いが必要となります。
ただし、住民票の世帯構成が同じなどの条件を満たした場合に限り、その月のみ、自己負担額が1/2に軽減されます。
軽減措置については、お住まいの市区町村に申請が必要になります。
また、多数回該当や世帯合算の回数については、資格が継続しているため、引っ越し前からカウントを引き継ぐことが可能です。
まとめ:治療を第一に、スケジュールの検討を
退職や転職・引越しと高額療養費の関係について解説してきました。
もしも退職日や転職日、引越し日の調整が可能であれば、損をすることがないよう検討材料のひとつにしてみてください。
日本の公的医療保険制度は正しく利用すれば大変手厚いものです。
大切な身体の治療を第一に考え、賢く利用していきましょう。
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