思いがけないケガや病気で治療や入院が必要になると、身体のことはもちろん、医療費も心配になってきますよね。
そんなとき「高額療養費」や「限度額適用認定証」について、見たり聞いたりすることがあるかもしれません。
高額療養費と限度額適用認定証の違いってなに?
そう思っている人や、「調べてもよく分からない」と思っている人に向けて、この記事ではどこよりもわかりやすく解説していきます。
高額療養費・限度額適用認定証とは?どちらがお得?
「高額療養費」と「限度額適用認定証」は、国が定めた「高額療養費」制度の中に「限度額適用認定証」があるという関係です。
健康保険(国民健康保険・社会保険)に加入していれば誰でも利用できる制度で、医療費が高額になった際、一定の金額を超えた分を給付してもらえる制度。
一定の金額とは、収入によって異なりますが、平均的なサラリーマンの場合は1か月当たりおおむね8~10万程度です。これが限度額と呼ばれます。
この給付は申請を行ってから2~3ヵ月後に振り込まれますが、あらかじめ医療費が高額になることが分かっている場合、もう一つの方法があります。
それが「限度額申請」です。
前もって保険組合に手続きを行うことで「限度額適用認定証」を発行してもらい、それを病院などに提示することで、支払いを一定の限度額だけに抑える方法。
簡単にまとめると、
高額療養費は、後からお金が戻るシステム
限度額適用認定証は、必要な金額だけ払うシステム
ということです。
どちらも最終的に支払う金額に変わりはなく、どちらがお得・損ということはありません。
金額的には変わりないものの、どちらのシステムを利用するのがよいでしょうか?
結論からいうと、限度額適用認定証を利用した方が、手間が少なくおすすめといえます。
ここからは、もう少し詳しく知りたい方のために、高額療養費と限度額適用認定証の違いを解説していきます。
高額療養費と限度額適用認定証の違いとは
ここからは、
高額療養費=「限度額適用認定証を使わず、後から高額療養費を請求するケース」
限度額適用認定証=「限度額適用認定証を使って支払いするケース」
と読み替えてご理解ください。
窓口で支払う金額の違い
仮に「年収 600万円のAさんが、60万円の治療が必要になった」と仮定します。
所定の計算式に従ってAさんの限度額を算出すると、83,430円になります。
限度額は収入によって異なり、年収約370万~770万円の場合は下記の計算式に当てはめます。
(計算式)80,100円+(医療費-267,000円)×1%
↓
80,100円+(600,000-267,000円)×1% =83,430円
高額療養費の支給を受ける場合、病院の窓口で支払う金額は60万円×3割負担=18万円です。
その後、ご加入の保険組合に請求を行うと、すでに支払った金額(18万円)と限度額(83,430円)との差額96,570円が銀行口座に振り込まれます。
受診から振り込みが完了するまでは、少なくとも3ヵ月程度かかります。
時間がかかるのは、医療機関から保険組合に提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査のためです。
一方で、限度額適用認定証を持っている場合は、病院窓口ではじめから83,430円だけを支払えばよく、とてもシンプルです。
クレジットカード払いなら得をすることも
高額療養費では3ヵ月も振り込みを待たなければならないことを考えると、限度額適用認定証はとても便利です。
ただし、あえて一度大きな金額を支払うことで得をするパターンもあります。
それは、クレジットカード対応の病院で支払いを行い、カード会社のポイントを獲得するというものです。
貯金に余裕がある方や、クレジットカードの「ポイ活」に積極的な方は、方法のひとつとして覚えておいてもよいかもしれません。
申請方法の違い
ここからは、高額療養費と限度額適用認定証の申請方法を解説します。
高額療養費の申請方法
高額療養費は、医療費を支払った後、加入している保険組合(国民健康保険の場合は自治体)に請求を行う必要があります。
請求期限は、診療を受けた月の翌月1日から2年間です。
申請にあたっては、多くの場合、医療機関名や支払った金額、治療期間等などの記入が必要となります。
領収書をなくさず保管し保管し計算する必要があり、保険組合によっては領収書の原本やコピーの提出が求められることもあります。
より詳しい申請方法はご加盟の保険組合または自治体によって異なりますので、直接確認を行ってみてください。
限度額適用認定証の申請方法
限度額適用認定証の申請は、社会保険であれば保険組合か会社の人事労務担当へ、国民保険であれば自治体へ行います。
申請の様式は組合や自治体によって異なりますが、高額療養費の申請書に比べると書類記入事項はかなりシンプルです。
病気やケガの証明等も特に必要ありません。
認定証が交付されるまでの期間は、即日~2週間程度と、保険組合によって異なります。
限度額適用認定証が手に入ったら、医療機関で保険証とあわせて提示します。
認定証さえ手元にあれば、自身で計算や申請を行ったりする必要がないのでスムーズです。
注意すべき点は、限度額適用認定証があれば事後の申請が一切不要というわけではないことです。
世帯合算等の利用状況によっては申請が必要になるケースもありますので注意しましょう。
高額療養費と限度額適用認定証、どちらを使う?
高額療養費と限度額適用認定証、どちらを使うかの結論は下記の通りです。
基本的に限度額適用認定証がおすすめ
これまで説明してきたように、限度額適用認定証は、はじめに手続きさえ行えばその後がスムーズになるのでおすすめです。
病院窓口での負担額が抑えられるのは、精神的なゆとりにつながります。
手続き自体も煩雑なものではありませんし、振り込みを数カ月待つ必要もありません。
唯一、限度額適用認定証をあえて使用しない選択肢があるとすれば、クレジットカードのポイントを貯めたいケースだけでしょう。
住民税非課税者なら限度額適用認定証が必須
住民税非課税世帯の場合は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受けることができます。
医療費が限度額まで抑えられるだけでなく、入院した際にかかる食事代の減額が受けられるので、必ず交付・提示を行うようにしましょう。
【例外】マイナンバ―カードの健康保険証利用なら申請は不要
これまで比較を行ってきましたが、マイナンバーカードを健康保険証として利用する場合には、限度額適用認定証の申し込みや提示は不要です。
- マイナポータルから健康保険証利用の初回登録を済ませている
- 医療機関がマイナンバーカードの健康保険証利用に対応している
上の2つを満たしている場合は、これまで説明してきたような申し込みや申請の手間なく、すぐに病院窓口での支払いを限度額までに抑えることが可能です。
受診予定の医療機関ではマイナンバーカードの健康保険証利用に対応しているかどうか、確認してみるとよいでしょう。
まとめ:限度額適用認定証を利用して治療をスムーズに
高額療養費と限度額適用認定証の違いについて説明してきました。
限度額適用認定証は、複雑な手間なく入手することができ、一時的な出費を抑えてくれます。
クレジットカードのポイントを得たいという場合以外には、すぐに入手しておいて間違いはないでしょう。
公的医療保険制度をぜひ有効に活用し、治療に専念していってください。