思いがけない病気やケガで治療や入院が必要になったとき、いったいどれくらいのお金が必要になるのか心配になりますよね。
そんなとき、病院などから「限度額申請」という言葉を聞くことがあるかもしれません。
この記事では「限度額申請」とは何かをイチからわかりやすく解説するほか、以下のようなお悩みを解決していきます。
- 医療費が高額になるのが心配
- 毎月の医療費がどれくらいになるのかイメージできない
- 限度額申請の方法がわからない
- 限度額申請が通院、退院に間に合うか不安
限度額申請について知りたい方はぜひ読んでみてください。
限度額申請とは
限度額申請について理解するには、まず高額療養費制度について知る必要があります。
高額療養費制度
高額療養費制度は、だれもが利用できる国の制度で、病院などの窓口で支払う医療費がひと月に一定の金額を超えたとき、超えた金額が医療保険から支給されるというものです。
簡単に言うと、医療費がどれだけ高額になったとしても、一定の金額以上は支払う必要がないのです。
一定の金額=自己負担限度額がいくらかは、収入によって異なります。
高額医療費は、病院窓口などでの支払い後、保険組合に所定の申請を行ったうえで、おおむね3~4ヵ月後に給付を受ける流れになります。
限度額申請
高額療養費制度によって給付を受けられるとはいえ、手元にお金が戻るまでの3~4ヵ月という期間は家計の負担にもなりうるものです。
そこで、あらかじめ医療費が高額になりそうなことがわかっている場合に利用できる制度が、限度額申請です。
限度額申請は、下記のような流れで行います。
- 加入している保険組合に限度額適用認定証の申請を行う
- 限度額適用認定証を入手する
- 病院や薬局の窓口で提示することで、限度額以上の金額を支払う必要がなくなる
前もって手続きを行うことで、はじめから支払い金額を限度額までに抑えることができます。
高額な医療費を支払う予定がある場合に、とても便利な制度です。
限度額申請で支払う医療費はいくら?
限度額申請について理解したところで、次に気になる点は「自分の限度額はいくらなのか」ということではないでしょうか。
高額療養費の自己負担限度額は所得によって異なります。
1カ月あたりの自己負担限度額(70才未満の場合)
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当※2 |
---|---|---|
年収約1,160万円~ 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:所得901万円超 | 252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1% | 140,100円 |
年収約770万~1,160万円 健保:標準報酬月額53万円~79万円 国保:所得600万~901万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
年収約370万~770万円 健保:標準報酬月額28万円~50万円 国保:所得210万~600万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
年収約~370万円 健保:標準報酬月額26万円以下 国保:所得210万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
※1…総医療費=10割負担の金額
※2…多数回該当=同じ世帯で過去12か月のうち、自己負担限度額に達した月が4回目になると適用される
仮に「年収500万円の人が、治療費に100万円かかった」をモデルケースとして考えてみます。
自己負担額を算出するため、上記の表にあてはめて計算すると下記のようになります。
(計算式)80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
↓
80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
自己負担額は87,430円となり、限度額申請を行っている場合、病院窓口ではこの87,430円以上を支払う必要はありません。
一方、限度額申請を行っていない場合は、いったん窓口で3割負担の30万円を支払い、後日差額の212,570円の給付を受けることとなります。
最終的に支払う金額に変わりはなく、はじめから少ない金額を支払うか、先に大きな支払いを行い給付を受け取るか、という違いになります。
対象にならないものは?
限度額申請は、大きな治療が必要な際、本当に便利な制度です。
しかし、下記のようなものは対象にならないので注意しましょう。
- 入院時の差額ベッド代
- 入院時の食事代
- 入院中の日用品代等
- 自由診療
- 先進医療
公的医療保険の対象とならない先進医療や自由診療は自己負担限度額の対象外となります。
入院時に個室を希望する場合の差額ベッド代も対象外です。
「高額療養費制度があれば民間医療保険の加入は不要」と言い切れない理由は、このあたりにあるといえます。
限度額申請の申し込み方法
ここからは、限度額適用認定証の具体的な申請方法を解説します。
社会保険の場合
企業にお勤めの方など、社会保険に加入している場合は、加入している健康保険組合、もしくは会社の人事担当者に確認しましょう。
保険組合に直接申請を行う場合、会社を通して行う場合があり、方法は組合によって異なります。
多くの場合、必要書類を記入するだけで申請が可能で、病気を証明するものや病院の領収証などは不要です。
限度額適用認定証が手元に届くまでの期間は、2~3日のところもあれば、1~2週間というところもあり、保険組合によってさまざまです。
医療費が高額になりそうなことがわかったら、早めに限度額申請の手続きを行っておくのがおすすめです。
国民健康保険の場合
自営業やパートアルバイトなど国民健康保険に加入している場合は、お住まいの市区町村の区役所などで申請を行います。
例として横浜市の場合、必要書類は下記の通りです。
参考:限度額適用認定証の申請について 横浜市
- 限度額適用認定証を必要とする方の国民健康保険証
- 届出に来られた方の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポート等)
即日交付をしてくれる自治体も多いですが、日数がかかる場合もありますので、急ぎの場合は事前に問い合わせを行うとよいでしょう。
また、自治体によっては郵送での依頼やオンライン申請に対応している場合もあります。
限度額申請後、限度額適用認定証が間に合わない時は?
便利な限度額申請の仕組みですが、限度額適用認定証が手元に届くまでの間に通院日や入院日が来てしまい、使いたい時に間に合わないことがあるかもしれません。
ですが、金額的に損をしてしまうことはありませんので安心してください。
限度額適用認定証が提示できない時は、いったん病院窓口で自己負担分(2~3割)を支払い、高額療養費の支給を受けることになります。
一時的に負担する金額は大きくなりますが、後日給付を受けることで、結果として支払う金額に変わりはありません。
限度額申請での注意点
最後に、限度額申請での注意点についていくつか触れておきます。
入院と外来/医科と歯科は別扱い
同一の医療機関でも、入院と外来、また医科と歯科では別機関の扱いとなります。
そのため、すでに入院で限度額までの支払いを行っていたとしても、月内に通院(外来)した際には、新たに窓口支払いを行う必要が出てしまいます。
※それぞれが21,000円を超える場合には「世帯合算」が利用できます。
薬局ではいったん窓口支払いが必要
院外薬局で薬を処方された場合には、処方箋を書いた病院と薬局が同一機関とみなされ、それぞれの金額を合算することができます。
ただし薬局の方では病院への支払い金額を確認することができないため、いったん窓口での支払いは必要となります。
合算金額として後日請求を行い、給付を受ける流れとなります。
まとめ:限度額申請を利用して医療費負担を抑えよう
限度額申請とは何かについて解説してきました。
日本の高額療養費制度のなかでも、さらに利用しやすく整えられた制度です。
ぜひ有効活用し、治療費負担の軽減に役立ててください。